質的分析アプリNVivoを用いたインタビュー分析に関する予備的検討

質的分析アプリNVivoを用いたインタビュー分析に関する予備的検討

郭 惠李玟


 NVivoは、質的研究もしくは混合研究のためのソフトウェアである。効率的に質的及び量的なデータを整理・分析し、データの中に含まれるパターンを見つける及び視覚化することが、NVivoの一番の特徴である。本文では、NVivoに関する基本的な概念を簡単に紹介した上で、「S学園B校の生徒及び教員へのインタビュー(以下、インタビュー記録)」を例として挙げながら、NVivoを用いたインタビュー分析方法を探究していく。

1. 基本的な概念の紹介
まず、NVivoに関して、「ファイル」、「コーディング」、「ケース」、「ノート」などの基本的な概念を紹介する。図1が示されるように、NVivoにインプットできる資料の種類はたくさんあり、「ファイル(図1左側のA)」はそのインプットされた資料の置く場所であると考えられる。よく使われるファイルのタイプは図2のようなになり、多様なデータを一元管理し、編集することができるのもNVivoのメリットである。インタビュー調査でよく使われるテキストの文字起こし[1]もNVivo内で実行できる。

 

 「コーディング(図1左側のB)」とは何かというと、あるテーマに関連するすべてのコンテンツを1つ「コード」に収集することである。「コード」は、ファイルにあるテーマに重点を置き、このテキストに関わるトピックや大事な問題点を示しているものである。例えば、インタビューを行い、多くの調査対象が授業について話し、それに関する文章を「授業」にコーディングできる。ここでの「授業」は一つのコードで呼ばれる。そして、「授業」に関連するコードを階層に整理し、「授業のやり方」、「授業が行われる頻度」、「授業への満足度」に細かくコーディングすることもでき、コードの間にある関係性も設定できる。
 「ケース(図1左側のC)」とは、分析の一つの単位であり、多くの場合に調査対象は人であるが、組織もしくは場所などの他の可能性もある[2]。「ケース」は、「コード」にやや似ているため、その違いを明らかにするため、二つの概念を以下(図3)のように比較する。「コード」はテーマを示す一方で、「ケース」は調査対象の情報を集め、例えば、インタビューの参加者の人口統計情報(性別、年齢)もしくはあることに対する回答(態度、評価)を収集すること。

 「ノート(図1左側のD)」は具体的な分析方法ではないが、研究する間でのアイデアを記録するには非常に役立つ。NVivoでは、メモを保持する・関連コンテンツをリンクしたりするために、3つの方法がある。①メモは、テキスト、画像、表を記入できるドキュメントの形で応用できる。②注釈は、ファイル内の選択したコンテンツにリンクできるテキストメモである。③参照リンクは、選択したコンテンツから他の選択したコンテンツ(ファイルやコード)へのリンクである[3]。

2. インタビュー例の紹介

 上述した基本的な概念の理解を踏まえて、これから、NVivoを用いて「インタビュー記録」の文字起しを一つの事例として分析してみよう。分析の前に、簡単にインタビュー例における調査対象の詳細を紹介する。多文化革新カリキュラム科研プロジェクトにおいて、国際学校の観察がメインの研究内容である。そして、S学園の上海市のB校(中国語では「中学」)の下での日本式の国際学校が、今回の観察対象学校である。インタビューを受けてくれた中国人生徒のSさんは理科系の二年生(調査時間20分)であり、先生は日本語を教える中国人のR先生(調査時間30分)である。
 S学園B校に所属する生徒及び教員へのインタビューを通じて、生徒及び教師の視点から中国における日本式の国際学校の特徴を探究することを今回の調査目的とする。半構造インタビュー調査を行う前に作成した質問項目は以下(表1)のようになっている。

 

3. インタビュー例に基づく分析
 NVivoにおける分析のプロセスは、①「インポート」、②「データの整理」及び③「探索」という三つのステップに大きく分けられる。ステップ①の「インポート」については、前述の「インプットできるデータの種類」の手順に基づき、次に、直接にステップ②の「データの整理」から始める。データをインプットした後に、整理の分野に入り、その方法は主に「コーディング」及び「ケースの作成」である。
 「ケースの作成」に関しては、前節で紹介したように、ケースは調査研究の単位を表す。人、場所、組織、またはその他の「分析単位」の属性に基づいて比較を行う場合(主にアンケート調査の場合)に、「ケースの作成」は便利な方法を提供できる[4]が、すべてのプロジェクトにはケースが必要なわけでもない。たとえば、文献をレビューする場合や、少数の調査対象に向けて詳細なインタビューを行う場合、ケースが必要であるかどうかは、調査の方法論や質問項目によって異なるためで、今回の事例ではコーディングの分析方法に重点を置き、ケースの作成に関する作業は一旦略する。
 コーディングの作業には、「自動コード」と「手動コード」という二つの方法があるが、その本質が同じく、ある特定な基準に沿ってコーディングを行うことである。コーディングの手順及びその原理をよく理解するために、先ず「自動コード」の応用を紹介するとしよう。NVivoの「自動コード」を行う前に、いくつかの設定が必要である。先ず、図4が示されるように、自動コーディングの方法(テーマ、感情、発言者、構造、既存のコード)を選択する。
 今回のインタビューでは、否定的もしくは肯定的な感情があまり表されておらず、調査対象としての発言者が二人しかいないため、感情・発言者の特定するコード法が適切ではないかと判断している。ちなみに、筆者のように二つの調査対象のインタビューの文章を一つのファイルに記入した場合に、発言者名を特定するコード方法を用いて、二つの調査対象の文を分けられ、普通にコーディングできるので、二つのファイルにする必要はない。

 

 また、スタイルや構造を特定するコード法は、一つの段落や質問項目によってコーディングする方法なので、同じキーワードに関わる内容は二つの段落で記入したら、二つのコードで分類される恐れがある。更に、多くの場合に、文字起こしにおいて、発言者の名前は段落の頭で記入するが、スタイルや構造によってコーディングする場合に、発言者の名前がコードの名前になってしまう。従って、スタイルや構造を特定するコード法を応用したい場合は、インプットするテキストの格式への検査及び設定が難しい。
 信男学園の生徒に半構造インタビューする前に、筆者は既にいくつかのキーワードを基準に質問項目を作成したことから、今回の例はテーマに基づくコードの方法に相応しいと思い、テーマを特定する形で「自動コード」を行った。特定されたテーマは図5のように示され、コードとして作成したいテーマを選定し、必要ではないテーマのチェックマークを外せば、「自動コード」の作業が終了する。後は分析目的の要求に沿い、コードを手動的に修正し、コードの増減及び階層を作成することである(図6)。
 図6から見れば、インタビュー例においては、「キャリア教育」、「クラス」、「学び方」、「教え方」、「課外活動」、「日本人先生」、「試験」、「成績」、「進学理由」、「進路」、「先輩後輩」、「S学校」などのコードがあるので、コーディングの段階で以上のテーマに調査を絞ることができる。

 

 ちなみに、「自動コード」は、一見便利で簡単にコーディング作業ができるが、実は重複するコードがたくさんあり、コードに編入されていない文章もあり、コードの間での関係性も曖昧であったので、コードの修正に時間をかけた。従って、半構造インタビュー調査の場合、調査前に大体の質問項目が既に立てられ、コードの階層も一程度予想がつける場合には、直接に手動コーディングすることが望ましいと考えられる。
 一方、「自動コード」によって、「B校」という事前に予想できなかったテーマがコーディングされた。コード「B校」に関連する文章は、主に国際学校としてのB校の特徴的な活動、授業のやり方、雰囲気などに関わる内容であり、国際学校の観察が行われる科研プロジェクト全体にも役に立つかもしれない。従って、事前に思いつけないテーマを提供できるのは、「自動コード」の一つのメリットとして、活用できることろかもしれないと筆者は思う。
 また、コードを増減する及び階層を作成する作業を行う際に、「探索ダイアグラム」機能の活用が望ましいと考えられ、全てのコードを思い通りに移動でき、コードの整理が非常に便利になる。図7が示されるように、右側におけるのは本インタビュー例の中の全てのコードである。生徒のSさんを中心に分類すれば、Sさんに関わるコードを一つのところに移動し、階層的にコードを整理する。

 

 ③の「探索」は、プロジェクトの最後のステップとして、データをクエリおよび視覚化し、調査に進むことができる方向性や洞察を提供する段階である[5] 。ここで、よく用いられる視覚化の「階層チャート」及びクエリの「単語頻度クエリ」を紹介する。
 「階層チャート」はコードの階層を視覚化し、コーディングのパターンを確認する役割を果たし、「コーディングリファレンス」と「コードされたアイテム」[6]という二つの表し方がある。前者はコードにコーディングされた文章の箇所の数を指す一方で、後者はコーディングされたコードの数を指す。そして、図8によれば、「教え方」の割合は明らかに他のコードより大きいということが分かった。つまり、インタビュー例の中で、「教え方」に関するコードは他のコードより多く、更に調査が必要の領域として特定されるべきだと考えられる。そして、ツリーマップの形での階層チャートを示す以外に、よりコードの割合を示せるサンバースト[7](図9)という表し方も選択できる。赤色の「教え方」をクリックすれば、その元にある子コードの名前及び割合の確認もできる(各コードの名前は脚注に書いてある)。
 この段階では、インタビュー例における各コードの割合を可視化になり、最初のコーディングの作業より、絞られる各テーマの中で重点を探索し、インタビュー例全体の状況を把握できると考えられる。

     ※  時計回りにオレンジ色から青色までのコードは:クラス、先輩後輩、学び方、
      成績、教え方、B校、試験、進路、キャリア経験。
     ※※ 割合の大きさにより、一番小さいコードは「課外活動」、次は「違い」、
      一番大きいのは「日本人先生」。

 「単語頻度クエリ」は、ファイル内で最も頻繁に出現する単語を一覧で表示し、調査の初期段階でテーマの特定に使えるし、絞られるコードの検証にも役に立つと思う。表示される単語の数、長さ及びその単語の定義の広さを設定し、クエリを実行したら、各単語の頻度及び類似語が示され、右側における単語の出現率によるワードクラウドも作成できる(図10の矢印)。
 インタビュー調査のテキストであれば、調査対象の名前や、調査に用がない言葉(思う、感じる、とか、ちょっと)が出る場合が多い。その処理方法に関して、例えば、図10の中で選ばれる「S」という単語は、生徒の苗字である。それを「停止語リスト」に追加すれば、次にクエリを実行する時にこの単語も表示されない。同時に、ある頻繫に出現する単語を単独でコーディングすることもできる。

 

 最後に、「比較ダイアグラム」を紹介する。「比較ダイアグラム」は、プロジェクト内の二つのアイテム(コードやケース)を自動的に比較し、共通点や相違点を提示する機能である。図11において、両端の○は相違のコードに対し、中間の方は共通のコードなので、生徒と先生のインタビュー調査における共通点は「あることに対する否定的感情」、「成績」、「B校」という三つのコードである。今回の事例では、生徒と先生の質問は同じではないので、「比較ダイアグラム」の事例として少し不適切であるが、調査対象の種類及び質問項目が大体同じ場合に、「比較ダイアグラム」の役割が果たせるではないかと思う。

 

4. 分析による結果

 インタビュー例の調査目的は中国における日本式の国際学校の特徴を探究することであるため、それに基づき、分析プロセスを踏まえ、調査結果をまとめてみると思う。
 インタビュー記録によるコーディング及び階層チャートを行い、中国上海市のB校を事例として、日本式の国際学校の特徴は以下のようになっている(表2)。まとめれば、B校においては、日本人と中国人先生が交代で日本語の授業を行い、活動授業では生徒たちが一緒にグループで勉強することが多い。日本語及び他の学科の成績により、ABCDEという五つのクラスが分けられ、授業のスピード及び試験の難易度が異なる。日本の高校と似ていて、部活動及び文化祭などのイベントが行われる。そして、B校はキャリア教育を重視し、定期的に進路や進学に関する講座を開催する。
 もちろん、日本式の国際学校の特徴を簡単に述べるだけではなく、その特徴が出現する原因、特徴の間にある関係性、特徴に影響を与える要素まで探究する必要があると思うが、今回の事例においては、調査対象は二人しかいないので、なかなか難しい。

 

 総じていえば、NVivoを用いて、インタビュー調査の分析が効率的になることが可能である。多様なデータのインプット及び保存ができ、コーディングのためにも様々な補助機能が完備している上で、質的データを各種の形で可視化することができ、異なる視点で調査を分析することもできる。一方、NVivoは質的研究及び混合研究を支援するためのソフトウェアなので、研究の結果までにたどり着くことができない。今回の試行では、インタビュー調査をする場合に、NVivoのほんの一部の補助機能を紹介しただけとなった。各研究における目的、対象及びアプローチなどの要素により、NVivo機能のより厳密で詳細な活用方法の検討については、まだまだ余地があると思われる。


注:

[1]自動文字起こしサービスの「NVivo Transcription」は有料である。         [2][3][4][5]NVivoユーザーヘルプ                                  (https://help-nv.qsrinternational.com/20/win/Content/concepts-strategies/ understand-the-key-concepts.htm最終確認:2022/03/10                              [6]「コードされたアイテム」の階層チャートにも、「教え方」におけるコードが一番多い。ここで略する。    [7]ツリーマップとサンバーストは異なるコードの表し方だけで、本質は同じ。