信男学園文来学中学国際部のカリキュラムの特徴と今後の検討課題

信男学園文来 学中学国際部のカリキュラムの特徴と今後の検討課題
 信男学園上海文来学中学国際部園部寿美子校長先生(全体カリキュラム調整、進路担当)・
 李先生(日本語教育および教育指導について)へのインタビューから

 田上哲


 多⽂化な教育組織とカリキュラム改⾰の追究を通して、新しい⽇本版の多⽂化カリキュラムを創造するという本研究プロジェクトの目的に照らして、本インタビュー調査から、信男学園のカリキュラムの特徴と今後の検討課題について整理したい。

 信男学園(上海文来学中学国際部)において、生徒は2年間を中国で教育を受け、その後1年半、日本の高等学校(姉妹校)に留学して教育を受ける。つまり、3年半の後期中等教育を受けることとなる。(中国と日本において、学校の年度の始期が異なることによる。)そして、卒業した生徒は中国と日本の両方で卒業の資格を得ることができる。
 2021年度は、京都大学に2名、早稲大学、慶應義塾大学、上智大学等の受験難関校に20名程度合格している。十分な学力が‘形成されるとともに、中国語、英語、日本語の3カ国の言葉を使用できる優秀な生徒を輩出しているということである。

 カリキュラムにおける内容面に関して、中国で実施される最初の2年間の教育は、基本的には日本の教育課程に準じたものであり、教科書も日本に準じたものを使用しているということで、特に理数系の科目は、日本のカリキュラムと同じものである。
 中国の学校での卒業が認められるためには、高校3年生時に実施される卒業資格試験「会考(ホイカオ)」を受ける必要がある。そのために留学している生徒は中国に帰国して試験を受ける必要がある。信男学園(上海文来学中学国際部)は上位21校という上海の教育局が指定した学校の中に認定されているため、会考(ホイカオ)は4科目(語文(日本でいう国語)と社会系(地理、歴史、政治))の受験で良いということである。その4科目以外は、「試験校」として、学校オリジナルなカリキュラムを組んで良いということで、上述したように、日本の教育課程に準じたものとなっている。
 ただ、4科目(語文と社会系(地理、歴史、政治))については、中国と日本では、異なる内容が教育されることとなり、生徒は中国における会考(ホイカオ)と日本における試験(定期試験や入学試験)の両方に対応することが求められるということになる。理数系の科目のように、一般性が高い科目については、国家を超えて、共通のカリキュラムを構成するのは比較的容易であるが、それぞれの国家が国民の形成のために、重要と考えている人文社会系の科目については、国家を超えて共通したカリキュラムを構成することは困難であり、教育の目的も含めて、根源的に検討していく必要があろう。
 次にカリキュラムにおける方法面について、使用言語の問題が語られた。生徒のほとんどは日本語に関して入学時はゼロベースなので、最初の1ヶ月は日本語科の教師によって集中的な日本語の授業が行われる。また、学校のスタート(開校)時は1年生の段階から日本語を用いて授業が行われていたが、進度に問題が生じるために、現在では日本語以外の教科、一年生に関しては、理数系の科目については日本の教材を使って、中国語で教えているということである。さらに、「一年生に関しては、とにかく早く日本語を吸収させないといけないので、これは今年からの取り組みなんですけれども、今までは日本式にこだわって一年生から授業をしてたんです。ところが、こうするといろんな先生が絡んできたときに、なかなかみんな均等なレベルではいかないんです。均等なレベルでいかない上に、スピードがなかなか上がらないんですね。だから、今年はちょっとチャレンジとして、中国人の先生に、文法の細かいところを中国語でやってもらうことにしました。とにかくN3の教科書のところを全部一年間で終わらせよう、そして日本人が間に入って、実際に使うところを日本語でやっていこうという風に、今年の一年生はどこまで進めるかという試みをしています」ということであり、限られた時間において、どのように進度を確保し定着を図るかということに関して試行錯誤が行われている。

 また、昨(2021)年9月に始まった中国の教育政策である「双減政策」に関わる問いに対して、今後のカリキュラムや指導法について、この政策が求めているものは、信男学園(上海文来学中学国際部)が取り組もうとしているものでないかと考えているものの、一般に中国の先生方は、自分たちはそういう教育を受けてきているわけではないので、恐らく大きなギャップを感じているのではないかということであった。
 このようなにカリキュラムを総合的に考えていく上で、国家の教育政策が、その変化を含めて、カリキュラムに大きな影響を与える可能性が常にあることを自覚し、カリキュラムの内容方法の構成や工夫に止まらず、カリキュラムの運営や実施を円滑にまた効果的に行なっていくために、教師にどのような力量は能力が求められるかを検討することやその力量や能力の開発のための研修のあり方等も検討することが必要であろう。

 最後に、カリキュラム評価に関わる問題である。どのような生徒が入学しているか、また日本の大学に進学した生徒のその後の状況はどうかという問いに関して、まず前者について、生徒の保護者に関して話を次のような話を聞くことできた。具体的には日本に留学した経験があり、日本に対する理解が深いということ、また、経済的にも裕福で、中国式の詰め込み教育に反発を抱いている知識層といった特徴があるこというであった。信男学園のカリキュラムはそのような保護者の期待に応えていると言えよう。ただ、後者については、現時点では日本の大学に進学した生徒のその後について、追跡調査、フォローアップ調査がなされていないということであり、カリキュラムを評価し改善するためにもこのような調査は重要であり、これからの課題とあろう。